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つい最近まで、結石というとどちらかと言えば男性よりの病気というイメージが強いものでした。
しかし、近年では結石患者の若年化は進む一方であり、女性にも結石患者は増えています。
背景として多く語られるのは「欧米化した食事」「プリン体摂取の増加」などが挙げられています。
欧米ではやはり結石患者数は多いそうなので、こうした食事による結石のできやすさというのは関わりがあると言えます。
では、尿路結石の原因とその予防法について詳しく見ていきましょう。
食生活と尿路結石の関係
冒頭で「欧米化した食事」が結石患者を増やしている…という旨をお伝えしましたが、これにはある栄養素が大きく関わっています。
それは「動物性タンパク質」です。
ではなぜ動物性タンパク質は結石と関わりが深いのでしょうか?
そもそも結石と言うのは、体内に過剰になったある成分が石化することで発生をしてしまうのです。
人間の体内で形成される結石で多いものは次に挙げるようなものがあります。
- シュウ酸カルシウム
- 尿路結石で発見されるものの約8割がシュウ酸カルシウムを主成分とするものです。
- リン酸カルシウム
- アルカリ性の尿でできやすい結石です。シュウ酸カルシウムの結石と一緒にできることも多いです。
- リン酸マグネシウムアンモニウム
- 尿路感染症が原因で結石になった場合、この種類の結石ができることが多くなります。
女性に多い結石の成分です。この結石は細菌を増やしやすく、さらに結石ができるとか、既存の結石を大きくするなど悪循環を招きやすくなります。
- 尿酸
- 高尿酸血症・高尿酸尿症・痛風の人などにできやすい結石です。
プリン体の多いアルコールを良く飲む人もなりやすい結石と言えます。
痛風と結石の両方に悩んでいる場合は、こちらの痛風のサイトも訪れてみてください。
- シスチン
- 結石としては稀ですが、遺伝による尿路結石の代表となる成分です。
尿をアルカリ性に調節することで結石を溶かすことができます。
以上の成分のうち、シュウ酸というのが食生活と関わり深いものになります。
シュウ酸と言うのは肉類(動物性タンパク質)を多く摂取することで体内に増える成分なのです。
そもそもカルシウムと結合しやすい成分であるシュウ酸は、体内で増加し過剰になることで、尿の中においてカルシウムと結合すると石化し、尿の通りを悪化させてしまうようになるのです。
通常であれば、少しくらい増加したシュウ酸は「腸内」でカルシウムと結合し、便と一緒に排泄されるのですが、あまりに過剰になったシュウ酸は腸内で結合できる量を超えてしまうので、尿内に出ていくことになってしまうのです。
しかも、日本人の場合はカルシウムの摂取量がまだまだ不足しているので、端から「腸内でシュウ酸と結合できるカルシウム量」の絶対量が不足しており、それに対して動物腺タンパク質の摂取量は上がっているので、体内のシュウ酸のバランスが取れず、結石を引き起こしやすくなっているのです。
以前はカルシウムの摂りすぎは結石を引き起こしやすくなると言われていたのですが、日本人に関してはまだカルシウム量が充分とは言えないので、カルシウムに関しては積極的摂取をしても構いません。
むしろきちんとカルシウムを摂取すると、腸内でシュウ酸と結合して便になって排出できる量も増えるので、カルシウムを必要量摂取することは結石予防として大切なことになるのです。
さらに、動物性タンパク質には尿酸も多く含まれているので、動物性たんぱく質を適量にしておくことは、尿酸による結石を防ぐことにも繋がる良い方法なのです。
尿酸が増える食べ物には、ビールやマグロを代表とするいわゆる「美味しいもの」が多くあるので、一昔前まで、尿酸が原因の結石や痛風は「贅沢病」と言われいたほどでした。
尿路結石を予防するために気を付けたいこと
これまでご紹介してきたように、尿路結石の原因となる「石」を作ってしまうのには食生活が大きく関わってきます。
ですから、簡単に結石を予防しようとすると、食生活を改善することから始めれば手っ取り早く、かつ的確です。
シュウ酸を含む食べ物の過剰摂取を控える
シュウ酸と言うのは一般的に「灰汁の強い」食べ物に多いと言われています。
灰汁が強い食べ物の一例としては、ホウレンソウやタケノコが挙げられます。
他にもチョコレートや紅茶、ココアにはシュウ酸が多いとされているので、過剰にこれらの食品を摂取することは控えた方が良いでしょう。
ただ、栄養価の面から見てホウレンソウを摂りたい!と言う人は調理法に工夫すると良いですね。
ホウレンソウも茹でてお浸しにすると、シュウ酸を半分程度に減らすことができますよ。
カルシウムは必要量を摂る努力を
日本人はそもそもカルシウムの摂取量が不足していると常々言われいます。
上記でもご紹介したように、カルシウムの過剰摂取はそのまま結石に繋がると言われていた時代もありましたが、今は腸でシュウ酸と結びつけるカルシウムを保持するためにも、成人で1日600mgのカルシウムは最低限摂取することが推奨されています。
シュウ酸の比較的多い紅茶やココアを摂る際にも、そこに牛乳を入れることでカルシウムが摂れますし、少しの工夫でシュウ酸とカルシウムの摂取はバランスが取れるので気を付けたいですね。
水分をしっかりとる
尿路結石を作りやすくなる原因の1つに、尿の濃度を濃くしてしまうということがあります。
これを簡単に解消するのは、とにかく水分をしっかりととることに限ります。
例えば1日2リットルを目安に水分をとるのは実は大切なことです。ただ水を2リットルと言うと続きそうにない人は、水・お茶(ほうじ茶や麦茶)を中心に、自分の好みの飲み物も少しずつ加えながら水分をきちんと摂取することが大事です。
結石のできやすさだけを考えると、1日の水分摂取が1リットル以下の場合は結石ができやすく、2リットル以上水分をとるとできにくくなると言われています。
あまり水分をとらなかった人がいきなり毎日2リットル以上は大変なので、これは少しずつ体を慣らしていくと良いでしょう。
糖分と塩分の摂りすぎには注意
糖分・塩分については、一般的な健康管理のためにも過剰摂取は控えた方が良いのですが、結石を予防するためにも有効な手段と言われています。
糖分を過剰に摂取すると、カルシウムを尿中に排泄する量を増加させてしまいますし、塩分も同じく、過剰に摂取することで尿中のカルシウム排泄を増加させてしまいます。
このことから、水分の摂取で甘味飲料水や清涼飲料水、イオン飲料を多く摂ることが推奨されないのです。
特にイオン系の飲料水は、身体に良さそうに思えますが、糖分やナトリウム量が多くなりがちになるので、気を付けましょう。
夕食の時間には気を付けましょう
尿の濃度を濃くすることは結石の形成の一助になってしまいます。
1日のうち、尿の濃度が自然と高くなるのは「朝」です。
理由は簡単ですよね、前の夜に食事をしたものを消化してその排泄物が尿となるにも関わらず、夜間は水分を摂らないので尿が濃くなるのです。
ですから、夜は出来れば食事をしてから4時間以上経ってから就寝することが理想となりますし、できたら夜間の尿を濃くし過ぎないようにしたいものです。
※ちなみに、動物性タンパク質を摂取してから、体内でシュウ酸の濃度がピークになるのは、摂取後2~4時間と言われています。
ですから、夕食後2時間くらいで1度トイレで排泄をしてから寝ると、夜間に生成される尿中のシュウ酸量を抑えることができますよ。
また、サプリメントでも上手に予防ができる優秀なものがいくつかあります。一度チェックしてみてくださいね。