この記事を読むのに必要な時間は約 12 分です。

切らないで治す!ESWL手術など最先端の治療法

一昔前までは、自然排石のできない大き目の結石などは、開腹手術を行うことも珍しくありませんでした。

高齢の方で、結石の再発を繰り返していた人の話では、結石で開腹手術…というのもよく聞く話だったようです。

ただ、医術は日進月歩の分野ですので、今では結石で開腹手術をする人というのは、寧ろその方が珍しいというくらいに頻度が下がっています。

では、現代での結石治療の主流はどのようなものなのでしょうか?

そして、最新の結石治療とはどうなっているのでしょうか?

今回は結石とその治療法について詳しくご紹介します。

結石治療の主流は今でも自然排石?!

結石の自然排石

さて、結石の治療で手術をすることは少なくなったと冒頭でご紹介しましたが、実は昔も今も治療の主流はある方法のままです。

その方法とはズバリ「自然排石」。

そう、結石と言うのは患者さんの痛みが強い場合でも、基本的には自然排石を待つというが一般的なのです。

自然排石が期待できる結石の大きさ

結石の大きさ

結石の治療の基本は自然排石であるとしましたが、だからと言って全部の結石について自然排石が望めるかと言うと、そんなことはありません。

やはり自然に排出できる結石の大きさには限度があって、どんなに大きくても10mm以下の場合において、自然排石が望めるということです。

ただ、10mmと言えば1cmです。人によっては大変な痛みを伴っていることもあります。

また、10mm以下の結石であっても、出来ている場所によっては、尿の流れが身体に著しく負担を与えることも考えられます。

医師の考え方によっては、7~8mmで自然排石から別の方法に治療方針を転換する人もいます。

10mmという大きさは飽くまで一般的な目安であって、「絶対」の大きさではないので、注意してくださいね。

自然排石を待つ際になされる処置など

結石を排出してくれる薬

結石を自然に排出すると言っても、それはただいつもと同じ日常を過ごす…という意味ではありません。

自然排石を待つ間も、痛みが強く日常生活が困難な場合は入院をして排石を待つこともありますし、入院をしなくても薬などで尿量を増やしたり、結石の成分によっては結石を溶かそうとする薬を処方されることもあります。

多くの場合は、尿量を増やしたり、尿管を拡張するような薬を処方されて、自然排石を待つことが多いようです。

他には、結石は身体のにくっついているものではないので、水分を摂取した後に運動をすることで、結石の移動を容易にすると言われています。

その際に有効な運動は、「なわとび・屈伸運動・階段昇降」などが代表的なものになっています。

これらの運動は、結石の移動だけでなく、運動によって代謝を高めることで、尿管の働きを活発にし、尿の停滞を防ぐ働きもあります。

SPONSORED LINK

自然排石できない場合の治療とは?

ここまでにご紹介してきたように、結石の治療の主流は今でも自然排石を待つということなのですが、自然には排出できない結石の場合も多くあります。

そうした場合、昔は開腹手術をしていたわけですが、現代は体外から結石を砕く方法や技術が飛躍的に上がっているので、開腹手術をすることなく結石を除去する方法が採られています。

その代表とも言えるのが、次にご紹介する「ESWL=体外衝撃波結石破砕術」です。

ESWL=体外衝撃波結石破砕術とは?

ESWLの機械

日本語にすると、一見して少年漫画のヒーローのワザのような名前ですが、これは今や30年以上も結石に対して効果をなしてきた結石の治療法です。

この治療法は、結石の大きさがたとえ10mm以下でも結石の痛みが強い場合や、自然排石に時間がかかって、患者に痛みの負担が大きい場合など、結石の治療法として選択される第一の方法ともなっています。

具体的には、体外で発生させた衝撃波を、体内に存在している結石に収束させることで石を破砕するというものになっています。

破砕され、細かくなった石は結局は尿と共に体外に排出されるのを待つことになるのですが、かなり粉々になるので、一時のような痛みを感じることはほぼありません。

この治療法については、患者の身体的負担は大変少ないので、医療機関によっては日帰り入院と言う形で施術を行うところもありますが、基本的には1泊2日の入院と考えた方が良いでしょう。

この治療を奨められる患者の60~70%は、ESWL単独での治療で結石を解消することができるようですが、中にはこの方法だけでは充分な効果を得られず、これからご紹介するTULPNLと言った方法を一緒に用いることもあります。

ちなみにESWLの治療に用いる装置では、1980年に世界で初めて腎結石治療に成功した「ドルニエ社」の装置が全国的にも主流で、国内では300台以上がこのドルニエ社製のESWL装置と言われています。

現在のところ、このドルニエ社製の最新装置は「DeltaⅡ(デルタⅡ)」と言われるもので、患者さんは仰向けのままで特に体位を変えなくても、腹部・背部いずれからも結石の治療をすることができるようになっています。

これは、装置のユニット自体の可動域が-190度~+10度とかなり広く設定されているからなのですね。

結石治療に実績のある病院であれば、この最新式の装置が入っていることも多いので、結石の治療でどの病院に行くか迷っている人には、こうした「どんな装置が使われているか」も重要なポイントにできるはずですよ。

TUL=経尿道的結石除去術

結石除去術に使われる内視鏡

内視鏡を尿道経由で膀胱内に入れ、さらに尿管内へと内視鏡を進めることで、尿管内にはまってしまっている結石や、腎臓内の結石が破砕できる方法です。

多くの病院でホルミウムヤグレーザー(ホルミウムレーザー)というレーザーを用いて結石を破砕しています。

このホルミウムレーザーとは、波長が2100nmの赤外線域のレーザーであり、水に吸収されるという性質を持っています。
この性質故に内視鏡手術で安全に使用でき、またレーザーのパルス発振によって得られる高いエネルギーは、結石の破砕に特に有効と言われています。

ESWLと異なるのは、実際に身体に内視鏡という器具を入れるため、麻酔(多くが下半身麻酔、場合によって全身麻酔)が必要な手術であるということです。

開脚の体位で陰部を消毒し、尿道から内視鏡を挿入して膀胱内を観察し、尿道口と呼ばれる尿の出口から尿管・腎臓へと内視鏡を進めます。
内部は体内の水分と同じpHの生理食塩水ですすがれながら施術は進みます。
医師はモニター画面を見ながら操作をすることになります。

内部で結石が確認できたらレーザーを照射し、結石を破砕、手術に要する時間は大体30~120分程度と言われています。

もし結石はかなり大き目であるとか、長期間患部にはまりこんでいて手術時間が長くなるという場合には、手術の終了時に尿管ステントというチューブを尿管内に留置し、後日抜き去るという処置があることもあります。

この場合、尿道にもカテーテルが留め置かれますが、こちらは手術翌日には抜かれます。

術後は特に問題がない場合は、手術の後2日目の朝には退院可能になるのが一般的です。
ただし、医師や病院の方針では、1週間程度の入院を必要とする場合も少なくないので、しっかりとした事前のカウンセリングをしましょう。

また、とても稀ではありますが、この方法も「手術」なので合併症などのリスクはゼロではありません。
TULでのリスクとして挙げられるのは、尿管穿孔(尿管の壁に穴が開く)や尿管断裂(尿管が裂ける)という尿管損傷が一般的です。

医師としては、内視鏡を挿入後にこのようなリスクが発生しそうであることがわかった場合、他にも炎症性の粘膜浮腫やポリープによって結石そのものをモニターで確認できないと言った場合には、TULの操作を断念することもありますので、そうしたリスクについてもしっかり話を聞いておくのは大切です。

また、問題なく手術を終えた場合も、手術後はほぼ全ての患者さんに血尿の症状があります。
この血尿は通常数日から、長くて2週間程度で自然に良くなります。

PNL=経皮的結石除去術

この方法は結石の治療の中でも開腹手術に次いで大掛かりな治療法です。

手術の流れとしては、麻酔後、腰背部(腎臓に近い背中)を小さく切開し、そこから腎尿路へと繋がる通路を作ります。
そして作成した通路から内視鏡を挿入し、腎尿管内の結石を砕き、除去するというのがこの方法です。

結石そのものは、空圧式砕石機やレーザー、超音波砕石機などを使用して破砕されるのが一般的で、その方法・機器を用いるかは医師の方針や施設によって異なります。

PNLを用いるのは、ESWLだけでは治療困難であった場合、尿管からの排泄が不良と思われる腎結石の場合、さらに結石の大きさが2cmを超えるものである場合など、比較的治療に難渋するものに対して行われます。

用いられる麻酔は、全身麻酔・硬膜外麻酔・局所麻酔のいずれかで行い、入院は長ければ1ヶ月程度というのも珍しくはありません。

開腹手術よりは患者さん側の負担は少ないのですが、それでも結石に関して言えばやや大掛かりな手術でもあり、こちらもTULと同じく、手術のリスクはないわけではありません。
考えられるリスクは腎血管の損傷による腎出血や、腎盂や尿管の損傷が挙げられます。

稀に手術中の出血が著しい場合の輸血なども必要となるため、手術前の丁寧なカウンセリングは欠かせません。

開腹手術

開腹手術の道具

ここまでにご紹介してきた方法のいずれも効果を見ない場合や、そもそも上記のような治療が行えないような結石であると診断された場合は、今でも開腹手術によって結石を取り除くことはあります。

ただ、結石での開腹手術というのは、結石が再発した際に「再手術」というのは困難になる場合が多いので、結石で開腹手術をするというのは、今ではかなり稀な事例と言えます(特に腎結石は再発率が高いので、医師は開腹手術をなるべく避けようとします)。

開腹手術は大きな手術になるので、入院も1か月程度は見た方がよくなりますし、傷跡も約20cmと大きくなることが患者さんには負担です(もちろん手術そのものの身体的負担は大きくなりますし)。

しかしながら、ESWL・TUL・PNLと言った方法で改善が見られない患者さんにとっては、開腹手術で結石の痛みから解放されることはとても有意義なことであるのは間違いないので、他の方法では結石除去が難しいけれど、どうしても結石を取り除きたい!と言う人は一考すべき方法でしょう。

その場合には、医師の経験や実績、さらに病院の設備などもしっかり調べた上で、納得のできる手術になるように医師や看護師といったスタッフと綿密にカウンセリングを行うことをおすすめします。

また、治療が済んだあとも、油断していると結石はすぐに再発してしまう病気です。

サプリメントでしっかりと予防対策を行っていくということが何よりもオススメですよ。