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肝内結石は自覚症状が少なく、発見が遅れることも…

胆石の中でも難治性で知られる肝内結石は、簡単に言うと、肝臓内の胆管に結石が詰まる病気ですが、場所が「肝臓」という身体にとって非常に重要な臓器だけに、できれば早期に見つけて治療をしたいですよね。

ただ、治療を始めるには肝内結石を「見つける」ことができなければいけません。

では、肝内結石とはどういう過程で見つかることが多いのでしょうか?何か特徴的な症状が現れたりするのでしょうか?

ここでは肝内結石の際に見られる症状を中心に、どんな検査で見つかるのか、また治療の過程はどういったものなのかをご紹介します。

肝臓は「沈黙の臓器」ゆえに…

沈黙の臓器である肝臓

肝臓と言うのは、一般的に「沈黙の臓器」とも呼ばれ、肝臓の異常と言うのはよほどコトが進まないと自覚症状が現れにくいとされています。

比較的罹る人の多いA型肝炎や急性肝炎、はたまた肝硬変まで、肝臓に関わる病気と言うのはどれもこれと言った自覚症状が出にくいものばかりです。

肝内結石もその例にもれず、実ははっきりとした自覚症状が出ないことがあったり、あっても発熱や腹痛といった程度のものだったりで、その症状ですぐに「私は肝内結石だ!」と気づく人は稀です。

しかし、肝内結石は胆汁の流れを妨げることになるので、発熱・腹痛に加え「黄疸」が症状として現れることがあります。

もしこうした症状が見られた場合は、他の部位の胆石も考えられますが、頭の片隅に「肝内結石の可能性もあるかも」と思っておくと良いでしょう。

また、こうした自覚症状がある人で、日常生活で使用する水について井戸水を使用している人は、肝内結石である確率が上がるので、病院では医師や看護師に使用している水が井戸水である旨を伝えるようにしましょう。

ちなみに…肝内結石の人を調べると、患者さんのうちの8割は、胆汁内に細菌が常在していることがわかっています。
肝内結石による発熱と言うのは、結石によって胆汁の流れが妨げられている時に、細菌によって胆管が炎症や感染を起こすからと言われています。

黄疸(おうだん)について

黄疸の画像

肝臓の異常を知らせるサインの1つとなる「黄疸」は、体内のビリルビンという色素が何らかの原因で血液中に増加している状態のことです。

血中で通常以上に増加したビリルビンは、全身の皮膚や粘膜に過剰に付着をするので、黄疸であるかどうかは一般的に「白目」が黄色くなることや異常に濃い尿の色で判断できます。

白目であれば日中、自然光の下で見るととてもわかりやすく黄色であることがわかります。
日本人は黄色人種であるため、肌の色で黄疸を判断するのは素人では難しい場合があります。

他にも、肝臓の調子が悪く、黄疸が出るほどであると、食事の味がわからなくなってきたり、身体のだるさがとれない、頭痛がとれないなどの症状もあります。

発熱・頭痛・黄疸という症状が見られる時は、たとえ肝内結石でなくても、肝臓が何が助けを求めていると考えられますので、速やかに内科や消化器科を受診してくださいね!

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肝内結石の検査ってどんなことをするの?

上記のように、肝内結石はそれなりの自覚症状をもって「もしかしたら何か…」と疑惑をもって病院を受診する人がいる一方で、全くの無症状で、会社などの定期健診で引っかかって病院を訪れる人もいます。

いずれの場合で病院を訪れたにせよ、病院では肝内結石について同じ検査を行います。

肝内結石を見つける検査で行うものには、以下の種類があります。

腹部超音波診断

腹部超音波診断の画像

人間には聞こえない高周波の音波を腹部に発信し、そこから返ってくる反射波(エコー)を受診し、その内容を画像化して診断するのが腹部超音波診断です。

出産を経験したことがある女性なら、妊娠中に胎児のエコーを見たことがあるかと思いますが、画像としては似たような感じです。

身体の組織には、その組成により基本的なパターンがあるのですが、腫瘍や炎症、結石がある場合には、その周囲の組織と言うのは正常な組織とは異なるパターンを見せます。
画像では、正常な組織と異常な組織の境界にコントラスト(明暗)の差が生じるので、それを目印に医師は「その異常が何か」を判断するのです。

また、超音波検査と言うのは、組織の異常の有無だけでなく、その異常がどのくらいの大きさであるのかとか、深達度はどの程度なのかということもわかります。

こうしたことが判断できる検査であり、比較的簡単な検査であるにも関わらず、X線検査のような放射線被ばくなどの心配もありません。

肝内結石などの検査では、腹部を広く出せる必要があるので、ズボンやスカートなどは腰の骨くらいまで下げる必要があります。
女性はワンピースなどを着て検査に行くのは控えた方が良いでしょう。

超音波を発するプローブ(探触子)と皮膚との間に空気が入ると正確な診断ができなくなるので、検査の際には腹部にゼリーを塗り、腹部にプローブを押し当てます。

検査の所要時間は大体10~20分もあれば終了します。

肝内結石など、結石と言うのは超音波検査では音波を強く反射するので白い像が映ります。
さらに音波は結石に反射されるので、結石の後方にはエコーが伝わらない像である音響陰影が見られます。

腹部CT

腹部CTの画像

結石の検査として行われる腹部CTには「単純CT」と「造影CT」があり、胆石の検査の場合、この両方を行うのが一般的です。

単純CTとは検査着に着替えた後、検査台に仰向けで横になり、両腕を上に上げた姿勢で位置決めの撮影をします。
この位置決めの撮影が完了したら、単純CTの撮影を行います。

おなじ結石でも胆道結石や腎結石がある場合は、造影剤を注入した「造影CT」では結石の状態が見えにくくなるので、先ずは単純CTを撮ることになるのですね。

単純CTの撮影が完了すると、次に造影剤(ヨード剤)を静注(点滴で2分くらいかけて行います)して、造影CTを撮影します。
造影剤の注入後は冷や汗・熱感などを感じることがありますが、通常の副反応ですので心配はいりません。

こうしたCT検査は、超音波検査とは異なり、色々と手順があるので、検査に要する時間は20~40分とやや長めです。

磁気共鳴胆管膵管造影(MRCP)

MRCPの画像

一般的な「核磁気共鳴画像検査」=MRI検査を胆管や膵管の検査用に応用したのがこちらの磁気共鳴胆管膵管造影=MRCPです。

検査される側としては、造影剤を胆管や膵管に直接注入しないので、負担が少ない点がメリットとなっています。

検査では、胆管と膵管に特化した造影ができますので、こうした部分の狭窄や閉塞があればそれらをしっかりと見つけることが可能です。

検査では、鉄分入りの炭酸のような液体を飲み、そのままベッドに横になり、ベッドがドーム状の撮影機に入ります。

色々とその中で指示があり、撮影は完了。所要時間は20分~30分程度が多いようです。

通常は結果はその場で聞けることはなく、解析結果は後日聞きに再診することになります。

肝内結石が判明したら

ここまでにご紹介した検査は「肝内結石かも」ということで、それをしっかり調べましょうという検査でした。

では、検査結果として肝内結石だと判断が出たら、どのように治療は進むのでしょうか。

検査結果で肝内結石が濃厚になると、治療を前提として経皮経肝的胆道造影(PTC)という検査や、内視鏡的逆行性胆膵管造影(ERPC)という検査をすることもあります。

そうした検査は病院や医師、または症状によって行うかどうかが別れてきます。

肝内結石の治療

肝内結石の治療について

種々の検査を経て、実際に肝内結石の治療を行うことになると、最もよく用いられる方法はやはり外科的な結石切除になります。

他にも最近では、上記で触れた経皮経肝的胆道造影(PTC)と言う方法を応用して、開腹手術をすることなく、皮膚から肝臓を通して胆管に内視鏡を入れ、結石を取り除くという方法が用いられることもあります。

結石の状態によっては、胆道鏡で結石を見つつ、電気水圧波を利用して結石を細かく砕く方法が用いられることもあります。

胆膵肝を専門とする一部の医療機関では、内視鏡的逆行性胆膵管造影(ERPC)の方法を応用して、十二指腸から肝内結石を取り除くという治療法を用いる施設もあります。

今現在の時点では、内服薬で肝内結石に有効な治療薬はないのですが、ウルデオキシコール酸や高脂血症治療薬、または漢方薬が処方されることもあります。

肝内結石は1回の治療や手術で治る事は稀で、再発を繰り返すこともしばしばみられます。
治療をした人の多くで、数年内に再発することがあるのです。

これが肝内結石が難治性と言われる所以となっていて、一度肝内結石になって既に取り除いた人、取り除かなくてよく経過観察をしている人などは、とにかく定期的に検査を受けるようにするのが大切です。

また、手軽に続けられるサプリメントで結石を予防していくのは非常にオススメですよ。