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肝内結石の原因は?

一度罹ってしまうと完治することが非常に難しいとされる「肝内結石」。

できれば肝内結石にはなることなく過ごしていきたいものですが、有効な予防法はあるのでしょうか?

また肝内結石を生じてしまうそもそもの原因とは一体何なのでしょうか?

肝内の胆道で「石」になっているのは何か

ビリルビンの画像

肝内結石もいわゆる「胆石」の一種であるので、読んで字のごとく、「石」状のものが存在しているわけですよね。

胆石には色々な場所でできるものがあるので、場所によって石を形成している材料も少しずつ違ってきます。
肝内結石と言われる「肝臓内の胆道でできる結石」については、その多くが「ビリルビンカルシウム」によって形成されていると言われています。

ビリルビンと言うのは、そもそも胆汁の中含まれる色素成分のことなのですが、胆道(もしくは胆汁内)に細菌が侵入すると、細菌内の酵素の働きで、ビリルビンが胆汁から遊離してしまいます。

そして遊離したビリルビンは、カルシウムと結合し、結晶化してしまうことになるのです。この結晶化したものが「ビリルビンカルシウム石」というわけです。

ちなみに、胆汁に侵入する細菌には十二指腸内の細菌が多いと言われていて、この細菌は十二指腸から胆管へ移動し、胆管を流れる胆汁に混入することで上記のメカニズムが発生してしまうとされています。

また、肝内結石である人の胆汁を調べると、患者さんの8割が胆汁内に細菌を含んでいるという報告があります。

つまり、肝内結石の患者さんのほとんどが、胆汁に混入した細菌のせいで結石ができていたと推測されるのです。

ビリルビンについて

肝内結石について知ろうとすると、必ず出てくる言葉に「ビリルビン」と言うものがあります。

これは体内にある物質の名前なのですが、ビリルビンについて知っておくと、肝内結石だけでなく、肝臓・腎臓・膵臓などの異常がある場合にも、医師の説明がわかりやすくなりますので、ここで簡単にご紹介をしておきます。

そもそもビリルビンと言うのは、赤血球のなかの「ヘモグロビン」から作られるものです。

赤血球の寿命と言うのは約4か月(120日)なのですが、赤血球は寿命が尽きると、破壊される際に「ヘム」と「グロビン」に分解されるのですね。

分解されたヘムとグロビンは、酵素の働きのよってさらにヘムとビリルビンに変化します。こうしてできたビリルビンを「間接型ビリルビン」と言います。

間接型ビリルビンは、肝臓に輸送され、肝臓にある酵素の働きで「直接型ビリルビン」というものに変化します。
この直接型ビリルビンは、便の一部となって排泄されたり、腎臓で尿の一部となり体外へ排出されるのです。

肝臓などの働きが正常でないと、尿が異常に濃くなったり、肌や白目が黄色くなるのはこうしたことによります。
検査でビリルビンをしらべるのは、肝機能障害や胆管障害があると、血中のビリルビンが異常に増加をするためです。

また、間接型ビリルビンと直接型ビリルビンを合わせたものを「総ビリルビン」と呼びます。

身体に黄疸などの異常がある場合、採血によって血中のビリルビン量を調べますが、この検査は酵素を用いて調べる方法と、試薬で調べる方法とがあります。

検査に置いては、まず総ビリルビン量を測定し、そこから他で調べておいた直接型ビリルビンの量を差し引くことで間接型ビリルビンの量を算出する方法がとられるのが一般的です。

ビリルビンの基準値は

  • 総ビリルビン量:0.2~1.2mg/dl
  • 直接型ビリルビン量:0.4mg/dl以下
  • 間接型ビリルビン量:0.8mg/dl以下

となっています。

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肝内結石になるのはなぜか

肝内結石はどうしてできる?

結論から言ってしまうと、肝内結石については、その原因はまだ明確にはなっていません。

これはインフルエンザのように「インフルエンザA型のウイルスによって、インフルエンザA型に罹る」という因果関係の明確な原因がわかっていないということです。

しかし、肝内結石における「傾向」は徐々に明らかにされてきていますので、ここではそうした傾向から原因を探っていこうと思います。

肝内結石の地域的特性

胆石と言うのは、国や地域に関わらず、比較的誰しもが罹りやすい病気であるため、昔から疫学検査や調査がさかんにされてきました。

肝内結石についても、全胆石症においてどの程度の割合で発症するのかということが、各国から報告されています。

それを見ると、肝内結石については地域によってかなり著しい差異があることが明らかになっているのです。

肝内結石の患者数が多いのは日本を含む「東アジア圏」です。
ただ、同じ人種という背景があっても、肝内結石については大きな地域差も認められています。

例えば台湾では、全胆石症例のうち、肝内結石の患者が占める割合は20%以上にもなりますが、韓国ではその割合は10.8%にまで下がります。

さたに香港では3.1%、シンガポールでは1.7%しか全胆石症における肝内結石の人の割合はいません。

同じ中国と言う国内を見ても、北京では全胆石症の患者のうち肝内結石の患者は9.2%ですが、国内北西部の沈陽では21.2%と2倍以上となっています。

東アジアのこうした現状と比較して、西欧諸国での全胆石患者における肝内結石の患者の割合はなんと1%以下であり、罹患した患者のほとんどがアジアからの移民と言われているのです。

こうした調査の行われた時期と同じ時期(1992年)の日本における肝内結石症の患者割合は2.2%でした。

肝内結石の年齢・性別的特性

肝内結石の年齢と性別の頒布は?

日本において行われた肝内結石患者の調査では、肝内結石症有病者の平均年齢は63.3歳(1998年調査)となっていて、以前(1970年代)に行われた調査の平均51.3歳から12歳も高齢化しました。

ここから推測すると、1970年代に50歳過ぎであった人が、1990年代に63.3歳と言う平均年齢を構成する世代になったと言えそうなので、「世代」としては同じ世代の人の帯がそのまま推移しているとも言えるかもしれません。

また、肝内結石に罹患する男女比は、男性1:女性1.2ということで、男女ともほぼ変わりはありません。

以上のことを踏まえると、肝内結石になる原因は、環境や食生活要因がある程度関係していると言えるかと思います。

さらに、最近の調査では、小児であること・成人であることに関係なく、先天性胆道拡張症の手術を受けた後に、7~8%の頻度で、肝内結石が発生することがわかっています。
この場合に発生した肝内結石は、全例がビリルビン結石で、結石発生までに、小児は6.8年、成人で10.3年が平均期間となっています。

これは、胆道の狭窄や吻合部狭窄があること、また胆管空腸吻合によって、ビリルビンが遊離しやすい細菌に感染することが原因と考えられています。

肝内結石はどうすれば予防できる?

ここまででご紹介したように、肝内結石になってしまう具体的かつ明確な原因は未解明です。

ですから、「Aという方法を試せば必ず肝内結石を防げる!」という有効で単純な予防法はまだ編み出されていません。

ただ、現在においては、肝内結石の「石」がビリルビンカルシウムを主成分とするものだけでなく、コレステロールを主成分とするものも増えてきているという事実があります、

よって、肝内結石をできるだけ予防していくためには、コレステロールを過剰に摂取し過ぎないことと、胆汁に細菌を混入させないよう、体調を整えておくというのが大変有効になると思われます。

コレステロールの過剰摂取を防ぐためには、動物性タンパク質やお菓子由来の脂肪分などの摂取を控えることが大切ですし、睡眠や生活リズムを整えて、腸内環境などを乱さないこともある程度効果があると思われます。

食生活の改善の具体例では

  • 水分補給は1日1.5リットルを目標にしっかり摂ること
  • レバー、うなぎ、たらこ、ししゃも、卵、ラード、マーガリンなどなど、こうしたものからのコレステロールを摂りすぎないこと
  • メタボリックに注意し、肥満気味の人は減量するようにすること
  • 野菜や果物からビタミンを欠かさず採ること。特にビタミンCはコレステロールが胆汁酸になるのをサポートしてくれるので大切です。
  • 水溶性食物繊維をきちんと摂りいれること。水溶性食物繊維は、胆汁酸と結合し、体外へ除去してくれる働きがあるので、体内バランスを整えるのに最適です。

こうしたことを心がけていれば、必要以上に過敏にならなくても、肝内結石の発生を招くことは少なくなるはずですよ。

また、肝内結石になった人について調べると、日常生活において、飲料水も含め「井戸水」を利用していた人というのが多いと言われています。

地域によっては、水がキレイなので井戸水を日常生活に利用できることは充分あり得ますが、それでも塩素で殺菌されている上水道には含まれない細菌がいることは否めないと言えます。

胆汁に細菌が混入することでビリルビンが遊離し、結果ビリルビンカルシウム由来の結石になることを考えれば、こうした井戸水などからの細菌が結石の発生に何らかの影響を与えていることも考えられます。

よって、日常生活で井戸水を利用している人は、体内に入る水に限っては水道水や購入した水などを使った方が、肝内結石を発生させる確率は下がるかもしれません。

また、サプリメントを上手に活用すると、結石ができづらい体質を作ってくれるので一度手に取ってみてくださいね。