肝内結石のイラスト 結石と聞くと「腎結石」とか「尿路結石」が有名ですが、実はそうした結石は痛みは強いものの、比較的簡単に治ることもあり、それほど「重病」とは思われていません。 周囲でも胆石や尿路結石には「なったことあるよ」と言う人がちらほらいたりしませんか? 一方で、今回取り上げる肝臓内の結石である「肝内結石」はそれほど頻繁にある病気でもなく、医療従事者の間でも「治すのが難しい」と言われている結石の種類になります。 ただ、絶対に治る事がない!というわけではありませんので、適切な治療と生活を続けていくことが大切になります。 それでは肝内結石について、ここから詳しくご紹介していきます。

まずは肝臓と結石の関係について

肝内結石を知る前に、まず頭に入れておきたい事に、肝臓の基本的な働きがあります。 肝臓は心臓と並んで、身体の臓器の中でも大変重要な機能をたくさん有している臓器です。 その重要な働きの1つに、胆汁と言う消化液を作り出すことがあります。 胆汁と言うのは、肝臓で産生されると胆管を通って胆嚢に溜められ、そして十二指腸へと送られていきます。 胆汁そのものは消化酵素を含んでいないのですが、十二指腸で膵液と一緒になることで膵液の持っている消化酵素の働きを活発にする作用があります。 そして活発になった消化酵素は脂肪やたんぱく質を分解し、小腸からそれらの栄養素を吸収しやすくするのです。 消化の役に立った胆汁は、腸から吸収され再び肝臓に戻ります。そして再度胆汁として分泌されるという「腸肝循環」と呼ばれる往復をします。 このように、肝臓にはアルコールなどの解毒作用があるだけでなく、上記のような消化にまつわる重要な働きもあるのです。 この肝臓が産生する胆汁は、胆管を通って輸送されるわけですが、肝臓内の胆管に結石ができると、胆汁の輸送ができなくなり、消化に不具合がでてくるのは想像していただけるかと思います。 これが尿管結石などであれば、痛みはあっても多量の水分などを摂取することで自然に体外へ排出されることもあったりします。 しかし、肝内結石になると、自然治癒は期待できませんし、外部からの治療も困難であるために、難治性の結石といわれることになるのです。 [gads3] [gads2] [gads]

肝内結石の様々な傾向

肝内結石には、結石そのものの傾向や、肝内結石に罹ってしまう患者さんの傾向など、様々な傾向があります。 以下にそれぞれの傾向について、ご紹介します。

国内の患者数の傾向

肝内結石は難治性と言われるのと同じくらい、国内では「稀に見る」結石の種類になりました。 10年ほど前のデータにはなりますが、当時の調査でも、日本全国で1年間に肝内結石で病院にかかった人は6,000人弱とされています。 しかも、それらの患者さんは、ほとんどが再発組で、新規の症例は何と1,000例程度であったと言われているのです。 このように、肝内結石と言うのは、現在の日本では減少傾向にある病気となっています。

結石そのものの原因の傾向

肝内結石がどうしてできてしまうのか、はっきりとしたことはまだわかっていません。 しかし、日本では、患者数と発生地域には関わりがあるのではないかということが言われています。 肝内結石と言うのは、その8割がビリルビンカルシウム系の結石なのですが、この結石ができるのは胆汁内の細菌が大きく関係しているのではということまではわかってきています。 こうした体内の細菌は、衛生状態や食生活の関与によって現在では激減傾向になるので、これが肝内結石が国内での発症数の低下に関わっているとされているのですね。 というのも、現在60代半ば以上の人で、日常に使用する水を井戸水で済ませられる地域に住む人は、今でも他の地域に比べ、肝内結石に罹る人の割合が高いと言われているためです。 キレイな井戸水なので、日常生活に使用する分には問題がなくても、実は身体に細菌を入れて過ごしているということは充分考えられるのです。 そうした細菌の働きが作用して、結石が作られやすくなっていたのでは、というのが一般的に見られる見解なのですね。 今でも欧米よりアジア地域の方が、肝内結石の割合が高いのは、井戸水などの使用頻度がアジア圏で高いからではないかとされています。

症状の傾向

肝臓を表した画像 肝内結石ができるのは肝臓内の胆管なのですが、そもそも肝臓は「沈黙の臓器」という別名を持つほどに、異常があっても痛みなどでそれを訴えることが少ない臓器です。 ですから、肝内結石が発見される人で結構な割合が「たまたま」見つかった人と言います。 それは会社の健康診断というような、いわゆる定期健診で腹部超音波検査を受けた時に見つかる…といった具合です。 自覚症状があって見つかるケースでは、発熱や腹痛といった症状が肝内結石が見つかるきっかけになった症状であることが多いですね。 こうした発熱などは、胆汁が結石によって流れが妨害され、胆管が炎症や感染を起こすからなのです。 実は肝内結石の患者さんでは、その80%の人が胆汁内に細菌を常在させていると言われているのです。 この細菌が、胆管に炎症などを起こす原因になっていると考えられています。

再発の傾向

肝内結石は他の結石と比較しても、特に再発しやすい結石として知られています。 1回の治療(手術)で根治する人は実は治療を受けた人の半分にも満たないのです。 多くの人が数年で再発するという傾向があり、それこそが肝内結石が難治性・難病と言われてしまう所以ともなっています。 しかし、どうせ再発するから…今は無症状だから…と放置すると、胆管の炎症が重篤化したり、肝機能が低下することで死亡することもないわけではありません。 さらに、肝内結石症の患者さんの中には、肝内胆管癌を発症してしまう人もいますので、一度肝内結石と診断された人は、治療後も異常を見落とさないよう、経過観察をしっかりと続ける必要があります。