結石の治療や治療薬について 尿路(腎臓~尿道まで)の各所にできる可能性がある「結石」ですが、その症状によっては「自然排石」が望まれる場合と、入院治療が必要になる場合があります。 「結石=激しい痛み」というイメージが先行しがちで、必ず入院や手術が必要と思われがちですが、実はそんなケースばかりではないのですね。 今回は比較的身近な病気である「尿路結石」とその治療に関しての情報を、様々な角度から見ていきます。

尿路結石のおさらい

結石の治療をご紹介する前に、一先ず結石の基礎知識をおさらいしておきます。 通常「結石」と言われるものには、腎臓にできるもの、膀胱にできるもの、尿管にできるもの…と色々あるのですが、それらは全て尿の通り道である「尿路」にできるので、まとめて「尿路結石」と呼ばれます。 中でも、患者の95%を占めるのが、腎臓・尿管にできる「上部尿路結石」です。 また、激しい痛みで知られる結石ですが、個人差はもちろんあるものの、痛みが強い結石のほとんどは、尿管以降に下ったものと言われています。 尿路結石で有名な「七転八倒するほどの痛み」というのは、「疝痛」と言われるもので、医師の間では「刺しこむような痛み」とも言われます。 この疝痛は、人によっては痛みによって吐き気や嘔吐を催すことがあったり、うずくまって動けず、救急車を呼ぶ人がいるなど、かなり激しい痛みである割合が高いです。 ただ一方で、腎結石の初期段階では、本人の自覚症状がほとんどないということもあり、その場合に健康診断等で運よく結石が見つかれば、その後の治療もさほど大変なものにはならずに終えることができます。

尿路結石の治療法イロイロ

先の項でもお伝えしましたように、尿路結石と一言で言っても、その痛みは様々で、要入院のケースもあれば通院で充分治療可能というものも多くあります。 ここからはケース別の治療法についてご紹介します。

結石が小さい場合(10mm以下)

10mm以下の結石 体調が思わしくないとか、血尿が出た!と驚いて病院に行ったら「結石」との診断。 しかし実際に調べてみると、その結石について医師からは「小さいので自然に出しましょう」と言われた…というのは、実はよくあるケースです。 と言いますのも、結石は多くの場合、10mm以下であると大した治療と言うのを行わないことがほとんどの病気だからです。 (※ただしこの結石の大きさでどういった治療法を選ぶかは医師によって方針が異なり、10mmでも自然にという医師がいる一方で、5mm以上で破砕法などの治療を試みる医師もいます) もちろん結石のある場所や、尿の通りなどを調べたうえでですが、「このくらいなら自然に排石できるな」と医師に判断されると、排石を促す薬の使用や尿量を増やす薬を使用して自然排石を促すようにするのは一般的な治療法です。 ただ、こうした薬による治療を施しても、結石が排出されないとか、患者自身の体調が悪くなっている時は、結石に直接作用するような治療法に方針転換されることも稀ではありません。

結石が大きい場合や、自然排石が難しい場合

自然排石を促進する治療の結果が現れない時や、見つかった時の結石の大きさが既に自然排石不可能な大きさの場合は、次のような治療をするのが一般的です。

ESWL=体外衝撃波結石破砕術

体外衝撃波結石破砕術 現在の結石治療の主流になっている方法です。 体外で衝撃波を起こし、それを体内の結石に収束させて、結石を破砕する方法です。 破砕された結石は細かくなるので、その後、尿と共に体外に排出されやすくなります。

TUL=経尿道的結石除去術

経尿道的結石除去術 経尿道的に2~3mm径の尿道鏡を使い、尿道内を観察しつつホルミウムヤグレーザー等を使用して結石を破砕除去する方法となります。 治療には3~4日の入院が必要で、実際にこの治療を行う際には手術室で麻酔をすることになります。 ESWLより確実に結石を取り除くことができるため、ESWLで取り除けなかった結石をTULで取り除く人もいます。

PNL=経皮的結石除去法

PNL 背中から、超音波ガイドに穿刺し、約1cmの腎瘻(じんろう※)を作り、ここから内視鏡を挿入したのちに結石を鉗子で摘出するか、超音波装置などで破砕吸引する方法です。 ※この治療では腎盂にカテーテルを挿入する。 効率良く結石を取り除けますが、治療はやや大掛かりになり、治療時には全身麻酔をする必要がでてきます。 そのため、入院も日帰りでは無理で、数日間の単位で必要となります。 大きな腎結石であるサンゴ状結石などの場合や、尿管の狭窄で破砕片の自然排石が難しいケースで実施されることの多い治療法です。 [gads3] [gads2] [gads]

結石の治療で使用されることの多い薬とは

自然排石を促す際の治療では、結石の成長を抑制する薬が使用されたり、排尿を促す薬、尿量を増やす薬が使われたりします。 以下に、結石の治療で使用されることの多い薬について簡単にまとめました。

自然排石を手伝う目的の薬

ウロカルンの画像
ウロカルン錠225mg
ウラジロガシエキス:腎臓内(主に腎杯・腎盂)や尿管と言った上部尿路にできた結石の成長抑制作用があります。 他に、結石の溶解作用、抗炎症作用、利尿作用も期待できます。
ラシックスの画像
ラシックス
フロセミド:尿管に結石がある場合に使用されることが多く、尿の排出を促進することで尿管の結石を体外へ出すことを手伝います。
イソバイドの画像
イソバイド
イソソルビド内容液剤:尿量を増やすことで、腎結石・尿管結石を尿と共に体外へ排出することを手伝います。
猪苓湯の画像
猪苓湯エキス細粒
猪苓湯:漢方です。結石になると、尿の通りが悪くなり、尿が出にくくなることがあるので、そうした排尿痛や残尿感を和らげるために使用します。
ロワチンの画像
ロワチン
α、βピネン、ボルネオール、アネトール、d-カンフェン、シネオール、フェンコン:尿路結石ができることを防止したり、現在ある結石を排石する作用が期待できます。 炎症や疼痛を和らげる効果もあります。
芍薬甘草湯エキス細粒の画像
芍薬甘草湯エキス細粒
芍薬甘草湯:腎結石や膀胱結石時の痙攣痛を和らげる働きが期待できます。 これは骨格筋や平滑筋の痙攣を抑える働きによって得られるものです。
以下の5種類は、成分はそれぞれ異なりますが、結石に対して「尿路を拡張し、結石を出しやすくする・痛みを和らげる・抗コリン薬の一種」と言う点で同様の作用が期待できます。
  • セスデン:臭化メビチウム
  • チアトン:臭化チキジウム
  • スパスメックス錠:塩化トロスピウム
  • ブスコバン:臭化ブチルスコポラミン
  • コスパノン錠:フロプロピオン
もちろん、上記の他にも使用される薬剤は様々ですが、現在よく使われるお薬は上記のものが多いですね。 また、痛みはあるけれど自然排石をしようとする場合は、ボルタレンなどの鎮痛坐薬剤が処方されることも多々あります。 ただ、お薬の使用や効果は個人の体質とも密接に関わってきますので(特に結石の場合、尿をコントロールするものがあるので、個人の体質上合わないものも出てくることがあります)医師や薬剤師としっかり相談したうえで服用するのは基本中の基本です。

尿路結石の治療費について

尿路結石の治療費について 尿路結石は通常ほとんどの場合は保険対象の病気ですので、患者の加入している保険に準じて個人の負担額が決まってきます。 ここでは、尿路結石の診断~治療でかかってくる費用について概要をご紹介します。

初回診察

結石を疑ったり、体調不良で病院を訪れた場合、初診の病院(もしくは初診の科)の場合は初診料が2000円ほどかかります。 すでに通院している病院や科であれば、その費用は必要なくなります(ただし一定の期間通院歴がなければ初診扱いになることもあります) 初回の診察・検査内容としては、エコー検査やレントゲン、尿検査をし、医師の所見を聞いたうえで、今後の治療法について相談し、自然排石をする場合は薬が処方されます。 大体初回診察にかかる費用は1万円前後が相場のようです。

自然排石の場合

薬で自然排石をさせる 初回で結石の状態が小さく、自然排石できると判断されれば、薬を処方されて日常生活の中で石の排出を待ちます。 初回の診察で、次回の診察を予約することが通常で、痛みによっては次回の予約より早く診察に行く人もいます。 診察の間隔は人それぞれですが、初診から2週間ほど様子を見る人が多いようです。 さらに、一般的な平均ですが、5mm以下の小さな結石の場合は、約7割の人が初診から1か月以内に自然排石すると言われています。 初診から半年では約9割の人が排石するようです。 5mmより大きく10mm以下の結石では、初診から半年で約8割の人が自然排石に至るとも言われています。 ただ、これは飽くまで一般論なの、痛みや熱、他の症状に苦しんで日常生活がままならない場合は、石が小さくても他の治療を行う場合ももちろんあります。

入院治療の場合

入院治療の画像 先の項でご紹介したESWLなどの治療を行う場合は、日帰りでも「日帰り入院」扱いになり、入院費用が必要になります。 痛みがなくても、結石の治療の場合には保険適用がなされますので、保険に加入していれば全額本人負担ということにはなりません。 結石治療の入院については、平均1日8000円ほどかかるようで、これに結石破砕の手術費用が入って9万円ほどが日帰りでも必要であるようです(3割負担の場合)。 結石を治療するために入院する人は3日ほど入院するという人が多いので、この場合は「手術費用+入院日数でかかる費用+投薬」などで12万円程度が必要額の最低ラインのようです。 この費用も3割負担で計算しているもので、内容には保険適用外の食事代なども含まれています。

年間10万円を超える医療費は高額療養費となる

保険に加入している人には、高額療養費の自己負担限度額というものがあり、一定額以上の医療費が発生すると、一定額より足がでた分の費用は加入している保険が負担をしてくれます。 条件は色々あるので、入院しそうだなとわかった時や、入院中でも構わないので、自分が加入している保険に高額療養費について相談をしておくことをおススメします。